この記事では、2022年度の第68回青少年読書感想文全国コンクール課題図書(低学年の部)4冊を実際に読み、それぞれどんな人に特におすすめかを紹介します。
本の選び方については、上の記事でも書いているので、ご覧ください。
その他、課題図書の分量や、キーワードを抜き出して載せています。どの本から読もうか迷っている方は参考にしてみてください。
『つくしちゃんとおねえちゃん』
いとうみく:作│丹地陽子:絵│2021年3月発行│福音館書店
どんな本?
小学2年生の「あたし」(つくし)と、4年生の「おねえちゃん」。「あたし」から見た「おねえちゃん」は、いばっていて、少しいじわる。頭がよくて、ピアノも上手。右足をひきずっていて、歩くことや走ることは苦手です。
「いばりんぼう」「あと五分」「ドッジボール」「なみだ」「ごめんなさい」の5つのお話が入っている本です。5つを通して読むと、「あたし」や「おねえちゃん」の心が少しずつ見えてきて、よりおもしろいと思います。
でも、1つのお話だけに注目して、読書感想文を書くこともできます。お話1つあたりの長さは10〜15ページくらいで、すぐに読めます。全部で72ページの本です。
気になるキーワード
姉妹・兄弟│いじわる│遅刻│ドッジボール│まけずぎらい│ともだちへのプレゼント│ごめんなさい│不自由な体
たとえばどんな人におすすめ?
- 姉妹や兄弟、身近なおにいさん・おねえさんに、ちょっともやもやしたことのある人。
- 「なかよし」や「やさしさ」って、どういうことだろう? 本当にこういうことなのかな? と考えたことのある人。
お姉ちゃんは、わたしがようちえんのころは、いつもいっしょにあそんでくれました。
でも、お姉ちゃんはこのごろ、同じ五年生の子とばかりあそんで、わたしには「またこんど」とばかり言います。おねえちゃんは、わたしのことがあまりすきじゃなくなったのかな。
ただ、この前……
となりの家のおばちゃんは、とてもやさしい人です。ぼくを見るといつも、あめやようかんをもってきて「おやつだよ」とたくさんくれます。
お母さんは、おばちゃんからもらったおかしを見ると、ちょっといやな顔をします。そして「おやつをもらいすぎちゃだめ」と言います。お母さんがくれるおやつは少しなので、ぼくはもっとほしいなと思います。だから、おばちゃんがおやつをくれるのはうれしいです。
だけど、夕ごはんの時間になったとき……
『ばあばにえがおをとどけてあげる』
コーリン・アーヴェリス:ぶん│イザベル・フォラス:え│まつかわまゆみ:やく│2021年9月発行│評論社
どんな本?
ファーンは、ばあばが大好き。でも、このごろ、ばあばはわらわなくなっちゃった。ばあばに、「ワァーイ!」をとどけてあげたい。ファーンは、こうえんでよろこびを見つけて、ばあばのところにもっていこうとしますが……。
32ページの大型絵本です。ばあばの気持ちがいつ、どんなふうに、どうして変わったのか考えてみましょう。また、表情豊かなファーンをまねして、自分のまわりで「よろこび」を探し、それを書くのもいいかもしれません。
イラストの色合いにも注目です。とってもカラフルなページと、何だか黒っぽくて暗く感じるページがあります。どうしてこんなちがいがあるのでしょう?
気になるキーワード
おばあちゃん・おじいちゃん│笑顔│人をよろこばせようとする│人が変わってしまったよう│ご近所探検
たとえばどんな人におすすめ?
- おばあちゃんやおじいちゃんとの思い出や、印象深いできごとがあった人。
- 自分のやったことで、誰かがよろこんでくれたことのある人。または、誰かのやってくれたことで、自分がうれしくなったことのある人。
このお話をはじめて読んだとき、ばあばがわらわなくなったり、反対にいきなりえがおになったりした理由が、ぼくにはよくわかりませんでした。そこで、夏休みにおばあちゃんに会いに行ったとき、本を読んでもらいました。そうしたら、おばあちゃんは……
「新聞を読みましょう。ニュースを見ましょう。」と、先生によく言われます。でも、新聞には悲しい話ばかりのっているし、ニュースに出ている人はいつもおこっているみたいでこわいです。ばあばが言うみたいに、「じんせいからよろこびがきえちゃったみたい」な気持ちになります。
どうやったら、ファーンのようにたくさんの「ワァーイ!」を見つけられるでしょう。わたしだったら……
『すうがくでせかいをみるの』
ミゲル・タンコ:作│福本友美子:訳│2021年9月発行│ほるぷ出版
どんな本?
かぞくには、それぞれすきなことがある。がっこうには、いろんなクラブかつどうがある。でも、じぶんにはどれもぴんとこない。ひとつだけ、これだ! とおもったのはすうがく。みんなには、ちんぷんかんぷんらしいけど。
42ページの絵本です。かわいいイラストの中に、さまざまな図形や規則性がかくれています。数学の用語はわからなくても、形のおもしろさに注目してみると新しい発見があるかもしれません。
巻末には、主人公の女の子が作った「数学ノート」がのっています。これをまねして、自分の好きなもので「○○ノート」を作ってみたら、それが読書感想文や自由研究のかわりになっちゃうかも?
気になるキーワード
数学・算数│形のおもしろさ│好きときらい│とくいとにが手│自分だけの世界│当たり前って何だろう│個性
たとえばどんな人におすすめ?
- 自分が好きなものを分かってもらえなかったり、友だちと話が合わなかったりしたことのある人。
- 算数が好きな人。または、算数がきらいな人。
わたしはまんがをかくのがすきで、よくじゅぎょう中に絵をかいて先生にしかられます。家でも、自分で考えたまんがをかいていると、おじいちゃんが来て「外で体をうごかすあそびもしなさい」と言われます。
これより楽しいあそびなんてないし、大きくなったらまんが家になりたいのに。毎日絵をかいているだけじゃ、本当にだめなのかな。……
この本に出てくる女の子は、数学のことばかり考えています。ぼくは算数がにが手なので、この子の気もちがぜんぜんわからないとはじめは思いました。
でも一かしょだけ、ぼくと女の子がにていると思ったところがあります。それは、石をなげて水切りをしたときにできる形が……
『おすしやさんにいらっしゃい!:生きものが食べものになるまで』
おかだだいすけ:文│遠藤宏:写真│岩崎書店
どんな本?
おすしやさんにやってきた8人の子どもたち。ならんでいるのは、さまざまな魚介類。しょくにんさんが「さぁて、どれをおすしにしようか?」と声をかけます。子どもたちは、「生き物」が「食べ物」に変わっていく様子を目の前にします。
魚を海でとるところから、わたしたちの口に入るおすしの形になるまでを、たくさんの写真で見せてくれる絵本です。おすしになるのは、キンメダイ、アナゴ、イカです。子どもたちのわくわくした表情も見どころです。
作者のおかだだいすけ(岡田大介)さんは寿司職人で、魚をさばく様子を子どもたちに見せる会やワークショップを行っているそうです。おかださんのサイトやブログ、Youtubeを見てみるのもいいですね。
気になるキーワード
おすし│魚│動物・生き物│釣り│料理・食事│いただきます・ごちそうさま│命を食べる
たとえばどんな人におすすめ?
- 魚や生き物の図鑑を見るのが好きな人。(逆に、生き物がきらいな人でも、この本で感想文を書けるかも?)
- 食べることや料理が好きな人。料理をしてみたい人。
ぼくはつりのゲームが大すきです。毎日あそんで、ぜんぶのしゅるいをコレクションしました。
本当のつりもやってみたくなったので、家ぞくにたのんでつれていってもらいました。でも、本もののエサはニョロニョロしたミミズで気もちわるいし、時間がたってもぜんぜんつれません。おまけに、やっとつれた魚はすごく小さくて、目がギラギラ光ってこわい!
つりがこんなにたいへんだなんて……
一学きは生きものがかりで、学校でかっているチャボのせわをしました。さいしょはドキドキしたけれど、エサや水をとりかえるしごとをしているうちに、だんだんチャボのことがかわいくなってきました。
あるとき、お母さんに「チキンって何の肉?」と聞いたら、「ニワトリだよ。学校でかっているチャボもニワトリのなかまだよ」と言われて、すごくびっくりしました。チャボを食べるなんて、かわいそうで、とても考えられません。
でも、わたしはたんじょう日にフライドチキンを食べたくて……
おわりに
本当は、本というのはどれを読んでも、何を読んでもいいものです。読書感想文だって、学校の宿題などで決められていなければ、課題図書ではないものを選んでいいのです。
ただ、今読みたい本が思いつかなかったり、そもそも本なんて読みたくないけど読まなくちゃいけない……というときに、大人がすすめる課題図書から1つを選ぶのは、かんたんで、案外悪くないものです。
この記事が、どんな本を読もうか、どの本を買おうか、悩んでいる人の助けになればうれしいです。
関連コンテンツ
主要参考サイト
- 青少年読書感想文全国コンクール公式サイト│課題図書
- 『つくしちゃんとおねえちゃん』
- 『ばあばにえがおをとどけてあげる』
- 『すうがくでせかいをみるの』
- 『おすしやさんにいらっしゃい!:生きものが食べものになるまで』